解説記事|佐賀県に動物園・水族館がない理由【2018年8月29日付け西日本新聞】




8月29日付の西日本新聞に「なぜ?動物園と水族館がない佐賀 理由を探ってみた」というタイトルの水族館に関する記事が掲載されていました。

https://this.kiji.is/405108962080097377

記事の内容は、水族館という仕組みそのものに関することがたくさん書かれていたので、記事の記述を引用する形で、解説してみたいと思います。

水族館のない都道府県は奈良県と佐賀県だけ

まず、タイトルの通り、確かに佐賀県には水族館がありません。

そもそも定義が曖昧なため、何をもって水族館と呼ぶかは難しいのですが、エリアを全国に広げた場合には、奈良県にも水族館が存在しないという考え方が定説となっています。

“担当者は「佐賀は(九州で最も)人口が少なく、集客が見込めないのではないか」と指摘。さらに「隣県の福岡と長崎に1時間ほどで行ける施設がいくつもあり、県内の需要が高まらなかったのだろう」と推測する。”

ここは需要だけでは説明がつかないと思われます。確かに、中心部の佐賀駅から、福岡県の“マリンワールド海の中道”と、長崎県の“海きらら”までちょうど約80km(1時間半未満)と中間地点にあります。

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しかし、日本全国には人口規模に関わらず複数の水族館が密集している地域も多く、他にも理由がありそうです。

“佐賀大農学部の徳田誠准教授(生態学)は佐賀に未整備の理由について「人口が少ない地域は入場料を高く設定しないと採算が取れず、民間は参入をためらうのだろう」と指摘。「自治体が運営するにも予算を割く余裕がなく、よほどの理解が必要」としている。”

との記述もありますが、これは佐賀に限った話ではないので、先ほどの通り他の地域には大小様々な水族館があることを踏まえると、あまり説明になっていないと感じます。

そもそも、動物園や水族館には収支以外の設置の目的があり、必ずしも来館者数を増やして収支が健全でさえあれば良い、という施設ではありません。

水族館は民営や公営などが入り混じり、観光行政の影響を受けたり、エンターテイメントとしてだけでなく教育的な役割が重視されたりすることもあるなど、その設置の目的は様々です。

佐賀についても、歴史的な背景や地形による立地の問題など、様々な観点から考える必要があると思われます。

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動物園や水族館は博物館?

“動物園と水族館は、博物館法で定める「博物館」の一種だが、それぞれの定義は「特にない」(文部科学省)ため、正確な数は分からない。”

ここは少し誤解を招くため補足が必要と感じました。

確かに、動物園や水族館は博物館法における「博物館」として扱われることもありますが、多くの動物園や水族館は、そもそも博物館法を根拠法としておらず、自治体の条例や会社法などに基づいて設置・運営されています。

その意味で、動物園や水族館とは何か?ということの共通の定義はなく、正確な数を測ることができません。

全国の水族館の数に関する考え方については、当サイトの以下の記事もご参考にしてください。

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動物園や水族館は何に費用がかかるのか?

“種の保存や繁殖にも力を入れ、動物の体調を管理するために多額の光熱費や医療費がかかるため、収益を上げるのが難しい。・・・一方、水族館は民営が6~7割を占める。巨大な水槽内の温度管理で電気代などのコストがかかり、事業者は独自の展示や催しで集客に努める。”

これも部分的に事実ですが、費用構造の面では収支が厳しい理由は別にあります。

これについては私自身の水族館に関する研究結果をご紹介します。

業界団体であるJAZAに加盟する水族館のうち、2007年度〜2016年度の10年間における収支に関する数字の開示が比較的多かった46の水族館を対象に、水族館に一定の補完を行いながら概算をしたところ、飼育や光熱費に必要な費用の約2倍近い費用が人件費として計上されています。

一般的なイメージでは「動物の飼育」のために温度や水質の管理、餌にかかるコストに注目されがちですが、大きな費用がかかっているのは人件費です。

しかし、日々生き物達の世話をし、水族館を管理運営するためのスタッフは欠かせない存在であり、安易に費用を削減するべきでないため難しい問題です。

さらに、経営環境の変化の中で、今後は繁殖のための費用・投資も必要になってくるため、動物園や水族館の収支に関する課題としては、費用を削ることよりも、収入を増やすことにある、と私自身は考えています。

動物園や水族館の飲食店・ギフトショップは儲かる?

“JAZA事務局は「レストランや宿泊などの付帯施設を整備して収益を図る事例もある」と明かす。”

最後の部分で、「事例もある」とあたかも珍しいような言い方になっていますが、付帯施設が無い水族館の方が珍しいので、少し実態が異なります。

付帯施設の有無ではなく、付帯施設が稼いだ収益の帰属先の問題となります。

動物園や水族館では、付帯施設の運用を外部の業者に外注していたり、公営の場合には施設の運営を受託した指定管理者の収益になっていたりなど、付帯施設がどんなに繁盛していても動物園や水族館にはお金が入らないような仕組みとなっていることも多いです。

これは、受託業者がリスクを負担していたり、動物園・水族館側に運営ノウハウがなかったりするため、一概に自前で運営すれば良いという結論にはならないことも難しい点です。

しかし、入館料だけで収支をまかなうことは難しく、長期的に見れば飲食店やギフトショップなどの収益源は動物園や水族館が自ら企画・運営するべきであり、独自性を持ったテーマ設定や商品開発、マーチャンダイジングなどを実施しなければならないと私は考えています。

これらを実現する手段について、私自身も、現場の実態などを踏まえた研究を続けています。

まとめ

このように、動物園や水族館は制度の問題や、仕組みの複雑さなどもあり、一般的なレジャー施設に比べて客観的な評価をすることが難しいという特徴があります。

まだまだ誤解も多いため、水族館研究者として、これからもこうした解説記事を書きながら、動物園や水族館に関する話題についてご紹介していきたいと思います(^ ^)

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