【3】水族館は「インスタ映え」を活かせるか|日本の水族館をめぐる論点2019




この連続記事は2019年の6月にまとめたもので、日本の水族館に関する様々な話題を「論点」として13のテーマで紹介します。

普段楽しく利用する水族館のことを、ちょっとだけ深く考えてみるきっかけになれば幸いです。

インスタ映え時代の水族館の情報発信

どんな業界においても、自社の商品やサービスの魅力をどのように伝えるか、という情報発信の方法は共通の悩みです。

第3回は水族館における情報発信の方法について考えます。

なお、この記事は株式会社サンシャインエンタプライズが運営していた「いきものAZ」内の「いきものがたり」にて連載記事として掲載頂いた内容を、一部変更した記事です。

前回記事は下記をご参照ください。

【2】水族館のリニューアルの効果を分析|日本の水族館をめぐる論点2019

2018年12月11日

ポイントその1:お客さん自体がメディア

皆さんは水族館に関する情報を収集するときに、どのような方法を使っていますか?

テレビでの特集や、新聞広告、駅のポスターなど色々な情報源がありますが、情報が溢れる今の時代は、多くの方に注目されるには「話題性」が必要で、話題を集めるためには、あえて人に伝えたくなるような情報であることが重要です。

とりわけ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)と呼ばれる、利用者同士が直接情報交換をするような仕組みが大きな影響力を持つようになったことで、情報発信のあり方は大きく変わってきたと言われています。

SNSといえば、TwitterやFacebookなどが有名ですが、「いきものAZ」もその一つですね!

いきものAZで写真やコメントをアップすることは、知らず知らずのうちに、皆さん一人ひとりがテレビや新聞と同じような「メディア」の役割を果たしていると言えます。

また、インターネットは「若者」向けのメディアと言われてきましたが、2017年に行われた総務省の統計によれば今や60代の方で7割、70代の方でも5割程度の方はインターネットを利用するなど、もはや年齢に関係なく情報発信の要と言えます。

ポイントその2:SNS時代の展示づくり

このように媒体やコミュニケーションの仕方が変化したことで、より多くの方に生き物の魅力を伝えるために、水族館側も生き物の見せ方を変えています。

例えば、水族館ではたくさんの人達がスマホやデジタルカメラを使って生き物達の姿や美しい水槽の展示などを撮影しています。

 そのため、例えば水槽を綺麗な状態に保つことや、水槽の中の装飾や色の使い方などを工夫して、「人に共有したくなるような写真」が撮れるような演出が重要になります。

美しい展示や生き物の変わった動き・可愛い仕草などは話題性が高く、SNSなどで拡散されていきます。

しかし、広告用の写真撮影や、テレビ番組などでカメラが入るときなどには、水族館やお客さんの協力などもあり、じっくりと必要な「画」を撮るための時間が確保できますが、お客さんが人混みの中で慌ただしく撮影しようとすると、シャッターチャンスを演出するような展示などが重要になります。

この点、私が色々な水族館を訪れているときによく感じるのが、反射や映り込みの問題です。通路側の照明の位置だったり、水槽の中の明るさだったり、要因は様々だと思いますが、ちょっとの工夫で写真が撮りやすくなるようなこともあり、もったいないなあと感じることがあります。

利用者にとっては生き物の生き生きとした姿を写真にでき、水族館にとっては情報を拡散してもらいやすくなるため、「写真の撮りやすさ」の観点から展示を見直すというのもSNS時代の情報発信の方法として重要だと思います。

一方で、写真の撮りやすさを、生き物の立場から考えてみるとどうでしょうか?

私たち利用者からすれば、シャッターチャンスが多いほうがよく、展示の環境はスッキリしている方が便利です。

しかし、生き物は本能として天敵などに常に晒されることを嫌がるため、場合によっては「隠れる場所」が必要です。

そのため、いかに利用者にとって不便でも、生き物達のことを思えば、ある程度見えにくい、つまり「写真が撮りにくい」場所も必要であることを私たち自身も意識していないといけませんね。

ポイントその3:水族館ならではの情報発信

水族館にとっての情報発信は、生き物の可愛さを伝えたり、「インスタ映え」するような展示を作ったりなど、決して集客を目的としたものばかりではありません。

水族館は、私たちが自然や生き物、環境などに対してどのように向き合うべきかを考えるきっかけを与えてくれる存在でもあるのです。

例えば、プラスティックゴミによる海洋汚染の問題が話題となり、大手飲食店などがプラスティック製ストローの使用廃止を進めていることなどが注目を集めていますが、姫路水族館(兵庫県)では、実際のゴミを「展示」することにより、文字だけでは伝わり難い海の現状もリアルに感じることができる工夫をしています。

また、センセーショナルな展示としてインターネット上でも度々話題になるのが、かごしま水族館の「沈黙の海」です。

何の生き物もいない「展示」によって、逆に自然や環境の大切さを伝える方法は、シンプルですが非常にインパクトがあります。

まとめ

このように、水族館にとっては集客のための情報発信の工夫も大事ですが、水族館だからこそできる情報発信をすることも重要です。

時代が変わりコミュニケーションの方法も変わったことで、どちらの情報の伝え方も変化を求められているのですね。

次回は、水族館の歴史を簡単に振り返り、時代の変化に応じてどのようにその姿が変わってきたのかをご紹介します!

【4】水族館の歴史とマーケティングの変化|日本の水族館をめぐる論点2019

2018年12月25日

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