【6】担当部署から考える公営水族館|日本の水族館をめぐる論点2019




この連続記事は2019年の6月にまとめたもので、日本の水族館に関する様々な話題を「論点」として13のテーマで紹介します。

普段楽しく利用する水族館のことを、ちょっとだけ深く考えてみるきっかけになれば幸いです。

水族館を担当する自治体の部署はどこか

前回の記事では、民営水族館の事例から、民間企業が水族館を運営する理由などを考えてきました。

第6回は地方自治体が所有している公営水族館について考えます。

一般的な民営・公営という大きな括りだけでなく、この記事では少し目線を変えて、自治体によって水族館を所管する部署が違うことなどに注目します。

そもそも、地方公共団体の役割を規定した『地方自治法』によると、「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」とあります。

法律はちょっと難しいですが、住民がより良い生活を送るために、水族館はどのように位置付けられてきたのでしょうか。

なお、業界団体の「JAZA」に平成29年度末時点で加盟していた59の水族館のうち、36の水族館が公営です。

なお、この記事は株式会社サンシャインエンタプライズが運営していた「いきものAZ」内の「いきものがたり」にて連載記事として掲載頂いた内容を、一部変更した記事です。

前回記事は下記をご参照ください。

【5】民間会社にとっての水族館|日本の水族館をめぐる論点2019

2019年1月19日

ポイントその1:地域を元気にする水族館

第4回の記事でもご紹介の通り、水族館の歴史をたどると、日本では観光開発などの流れの中で全国各地にたくさんの水族館が建設されてきました。

【4】水族館の歴史とマーケティングの変化|日本の水族館をめぐる論点2019

2018年12月25日

そのため、公営水族館には、街づくりや産業育成などを目的とした、その地域の観光や産業を所管する部門が担当することがあります。

例えば「宮島水族館(広島県)」は、広島県廿日市市の「環境産業部」が担当部署となっていますが、世界遺産にもなっている厳島神社があり一大観光地である宮島に立地する水族館として、観光政策の重要な役割を果たしていることが想像できます。

また、宮島水族館には様々な展示がありますが、中でも目立つのが牡蠣の養殖を表現した展示コーナーで、牡蠣が海を綺麗にする仕組みなどをパネルで解説しています。

こちらも広島県の観光・産業にとって大切な食に対する意識を高めることが期待できそうですね。

また、少し違った目線なのが、「さいたま水族館(埼玉県)」です。

こちらでは、都市計画や住宅関係の業務を行う埼玉県の「都市整備部」が所管しています。

なぜそんな部署で?と思うかもしれませんが、そのカラクリは、立地にあります。

さいたま水族館は、埼玉県羽生市の「羽生水郷公園」の園内にあり、この部署では公園管理の仕事も担当しているため、水族館の業務も合わせて所管をしているのです。

実はこの「公園」という観点は、水族館の仕組みを考える上で意外な重要性があります。

日本全国には、公営・民営関係なく、

  • 葛西臨海水族園(東京都)
  • アクア・トトぎふ(岐阜県)
  • マリンワールド海の中道(福岡県)

など公園の中に立地する水族館がたくさんあります。

日本一来館者の多い「美ら海水族館(沖縄県)」も、海洋博公園の一角にありますね。

水族館は、生き物と向き合う場としてだけでなく、緑豊かな公園の中で、その地域ならではの展示を通じて自然・環境を感じられるような、質の高い市民サービスとしても期待されています。

ポイントその2:水族館は社会の「学校」

一般的にはあまり知られていないのが、教育委員会が所管する水族館です。

皆さんは教育委員会と聞けば、小学校や中学校を思い浮かべると思いますが、水族館の中には、「教育施設」として教育委員会が管理する水族館があります。

例えば、

  • 魚津水族館(富山県)
  • 碧南水族館(愛知県)
  • 姫路水族館(兵庫県)

などがそれに該当します。

教育委員会が所管する水族館は、大きなコストをかけて派手な演出をするのではなく、小規模で地域密着型の水族館が多い傾向にあります。

その代わり、地域の生き物にこだわったり、解説のパネルを多くしたりと、学びの機会となることを意識した展示が感じられます。

また、大人にとっても学びの場であることから、生涯学習や文化に関する部署でも扱われることがあります。

一部の水族館では、展示の解説などにボランティアという形で市民が水族館の運営に関わることができる仕組みもあります。

例えば、「マリンピア日本海(新潟県)」は、新潟県新潟市の「文化政策課」が所管となっています。

ここでは地球環境に対する理解を深めたり、海や川を中心とした地域の文化を伝えたりするという観点でも、水族館は実に多様な役割を持つことが分かります。

ポイントその3:水族館で官と民が協力!

そんな公営水族館に共通する大きな悩みとしては、財源の問題があります。

より良い市民サービスのために様々な取り組みをする公営水族館ですが、予算上の制約などから民営水族館に比べて経営の自由度も少なくなりがちです。

都道府県や市町村の予算で運用されるということは、皆さんの税金で運用していることを意味します。

税金の使い道が厳しく問われる今の時代にあって、水族館でもより高い効果や効率などが求められています。

こうしたことから、他の公営施設と同様に水族館にも、施設の運営を民間に委託する「指定管理制度」があり、多くの公営水族館で導入されています。

さらに、「海遊館(大阪府)」や「須磨海浜水族園(兵庫県)」のように、公営から離れて民営化に大きく舵を切る水族館も登場し始めるなど、民間のノウハウを活用する動きはさらに進みそうです。

そこで次回は、皆さんも関心が高いと思われる水族館に関わるお金の仕組み(収支構造)について、ご紹介したいと思います。

【7】いきもの達の生活を支える水族館のお金の仕組み|日本の水族館をめぐる論点2019

2019年2月16日

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