【13】水族館を通じていきもの達のために何ができるか|日本の水族館をめぐる論点2019




この連続記事は2019年の6月にまとめたもので、日本の水族館に関する様々な話題を「論点」として13のテーマで紹介します。

普段楽しく利用する水族館のことを、ちょっとだけ深く考えてみるきっかけになれば幸いです。

水族館から私たちにできることを考える

これまで12回に渡って水族館の経営を切り口に、水族館の様々な機能や仕組みなどについて、データも交えながらご紹介してきました。

第13回は連載企画の最後のまとめとして、水族館をテーマにしながら、いきもの達のために私たちには何ができるかについて考えます。

なお、この記事は株式会社サンシャインエンタプライズが運営していた「いきものAZ」内の「いきものがたり」にて連載記事として掲載頂いた内容を、一部変更した記事です。

前回記事は下記をご参照ください。

【12】日米の事例から考えるイルカショーのこれから|日本の水族館をめぐる論点2019

2019年3月26日

ポイントその1:マーケティングの本質

マーケティングという言葉はテレビや新聞などでも頻繁に使われるため聞いたことのある方も多いと思いますが、簡単に言うと、お客さん目線で必要な商品を提供したり、お客さんのニーズを掘り起こしたりする際の考え方のことです。

この具体的な仕組みを考える際には、価格(Price)、商品(Product)、チャネル(Place)、宣伝(Promotion)という4つの要素がよく使われます。

例えば、お客さんの立場からすれば価格は安い方が良いかもしれませんが、以前の記事でもご紹介の通り、水族館を運営するために必要な資金の概ね7割ほどは入館料で成り立っているため安易に下げるわけにはいきません。

【7】いきもの達の生活を支える水族館のお金の仕組み|日本の水族館をめぐる論点2019

2019年2月16日

一方で、特に公営の水族館では市民のための施設という考え方から、入館料を上げることが難しいという一面もありました。

そこで考えられるのが、特別イベントや独自の会員制度など、商品(サービス)に応じて複数の価格制度を活用することです。

今は特別イベントを無料で行なっている水族館も多いですが、コンテンツを利用する・しないによって価格差をつけていくことが考えられます。

また、マーケティングは「商品を売るための手段」と思われがちですが、その本質はお客さんの「課題を解決する(ニーズを満たす)」ことにあり、商品はその手段に過ぎません。

お客さんに対して「あなたにできること」を宣伝して気付かせることも、ニーズを掘り起こす大切な活動です。

分かりやすいことから徐々にコミュニケーションを深めていって、最後には利用者の皆さんが水族館と一緒になって何か貢献したい、と思う気持ちを高めることが重要だと考えます。

なお、チャネルとは、小売や卸売、物流などに関することで、水族館経営にとっては欠かせない視点の一つではありますが、今回の記事では割愛します。

ポイントその2:ボランティアとして参加する

水族館と利用者とが一緒に活動する手段の一つに「ボランティア」があります。

私自身もまだ研究の途中ですが、日本全国で24ほどの水族館が何らかの形でボランティアの仕組みを持っており、地域住民を中心とした様々な年齢・性別の方々が参加しています。

活動の中心は、イベントや展示水槽などの近くでの解説で、パネルでは伝えきれないような情報を伝えたり、お客さんの素朴な疑問を解決したりすることで、水族館のお手伝いします。

自分の大好きないきもの達の魅力を自分の言葉で表現できることは、とても素晴らしい経験だと思いませんか?

なお、動物園は水族館以上にボランティアの仕組みが充実していますが、水族館では、動物園ではあまり見ない飼育に関するボランティアがあるのも特徴の一つです。

ポイントその3:サポーターとして参加する

ボランティアはやりがいのある仕事ではありますが、実際には、時間を確保するのが難しかったり、人と接する仕事は苦手という方も多いと思います。

そんな時、さらに直接的な支援の方法が、寄付などを通じた金銭的な支援です。

いわゆる「サポーター制度」と呼ばれるもので、一般的には、年間パスポートなどとは別に用意された特別な会員制度のことを言います。

個人や法人がサポーターになると、サポーター専用のイベントに参加できたり、自分の名前が入ったプレートを掲げたりなど、通常の利用に比べて特別な体験をすることができます。

欧米の動物園や水族館では、こうしたサポーターの仕組みが充実しており、動物園や水族館の運営にとっても非常に重要な役割を果たしています。

しかし、日本ではまだまだこうした仕組みは少なく、ウェブサイト上で公開されている範囲によれば、水族館では日本全国でも7つほどの園館でしか導入されていません。

水族館をよく利用するファンの皆さんの中には、「何か貢献したいけどその方法が分からない」という方も必ずいるはずです。

いきもの好きの皆さんも、お気に入りの水族館がサポーター制度を始めた時には、ぜひ参加してみてくださいね!

ポイントその4:普段の生活を通じて参加する

ここまでボランティアや寄付をご紹介しましたが、様々な前提があり、どれも私たちがすぐにできることではないかもしれません。

しかし、皆さんが大好きないきもの達のためにできることは、必ずしもこうした水族館側での仕組みを要することだけではありません。

以前の記事でご紹介した「ハッピーオーシャンズ」のように持続可能な食べ物を選んだり、環境負荷の少ない洗剤を使ったりなど、自然のことを意識して生活をすることは広い意味ではいきものを守ることに繋がります。

【7】いきもの達の生活を支える水族館のお金の仕組み|日本の水族館をめぐる論点2019

2019年2月16日

そのため、地産地消などを推奨することもこれからの水族館の大切な役割の一つと言えます。

水族館は、研究や教育、保全など幅広い役割を期待されており、展示を通じてお客さんの関心を高めるだけでなく、一緒に活動できるような仕組みづくりが求められています。

いきものが好きな私達一人ひとりが、自分にできることを考え、行動する手段を水族館が提供することができれば、水族館はさらに社会にとって大切な存在になると考えています。

これまで全13回に渡って、「水族館の経営」を切り口に連載記事を掲載させて頂きました。

今回は基本的な経営の仕組みを広く知って頂く機会とするため、あまり専門的な用語などを使わずに書いていたため、コアなファンの方や「いきもの」に関する話題を期待していた方にとっては、ちょっと物足りない方も多かったかもしれません。

私自身も、引き続き様々な観点から水族館経営をテーマにした研究を行い、実際の仕組みづくりや情報発信を目指していきます。

これまでお読み頂き、ありがとうございました!

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